社労士は独学でも合格できる?難しい理由を解説

最終更新日:2025-01-10

社労士試験は学習範囲が広いうえに、複雑な法律など専門用語が多いため、非常に難易度の高い資格です。

そのため、社労士試験に完全独学で合格をするのは厳しいと言われています。

ただ、費用を抑えたり、自分のペースで学習したりできることを優先して、独学で合格を目指したいという方も多いですよね。

そこで、この記事では社労士の完全独学が難しい理由を解説するほか、独学をする際の具体的な方法を解説します。

独学で合格した方や、独学を挫折した方々の体験談もご紹介するので、ぜひ参考にしてみて下さい。

社労士の独学は無理?完全独学での合格が難しい理由

社労士の完全独学は不可能ではないものの、非常に難しいと言えます。

主な理由としては、以下の3つが挙げられます。

  • 試験範囲が広く複雑だから
  • 合格率が5〜10%と低く、難易度が非常に高いから
  • 過去問分析と出題傾向の把握が難しいから

1つずつ解説するので、参考にしてみて下さい。

試験範囲が広く複雑だから

社労士の独学が難しいと言われる最大の理由は、学習する範囲が非常に広いことです。

以下のように、膨大な試験科目があります。

科目択一式選択式
①労働基準法及び労働安全衛生法10問(10点)1問(5点)
②労働者災害補償保険法10問(10点)1問(5点)
③雇用保険法10問(10点)1問(5点)
④健康保険法10問(10点)1問(5点)
⑤厚生年金保険法10問(10点)1問(5点)
⑥国民年金法10問(10点)1問(5点)
⑦労務管理その他の労働に関する一般常識10問(10点)(⑦、⑧の合計)1問(5点)
⑧社会保険に関する一般常識1問(5点)
合計70問(70点)8問(40点)

さらに、社労士試験は全科目の総合得点で合否が決まるわけではなく、科目ごとに合格基準点が設定されています。

そのため、1科目でも合格基準点を下回ってしまうと不合格になってしまうので、全科目をバランスよく勉強することも重要です。

試験形式には「択一式」と「選択式」の2種類があり、法律や制度に関する複雑な問題が出題されるため、非常に難しいと言われています。

また、社労士試験は法改正に深く影響するため、基本的な知識以外に最新の法改正対策も行う必要もあるため、独学での合格は非常に厳しいと言えます。

合格率が5〜10%と低く、難易度が非常に高いから

社労士試験の独学が難しい理由の一つに、合格率が非常に低いことが挙げられます。

過去10年間の受験者数と合格者数、合格率は以下の通りです。

実施年度受験者数合格者数合格率
2024年43,174人2,974人6.9%
2023年42,741人2,720人6.4%
2022年40,633人2,134人5.3%
2021年37,306人2,937人7.9%
2020年34,845人2,237人6.4%
2019年38,428人2,525人6.6%
2018年38,427人2,413人6.3%
2017年38,685人2,613人6.8%
2016年39,972人1,770人4.4%
2015年40,712人1,051人2.6%
引用元:厚生労働省>合格者数等の推移(過去10年)

厚生労働省のデータを基に過去10年の合格者の推移を見ると、合格率の平均は6%前後非常に厳しいことが分かります。

過去問分析と出題傾向の把握が難しいから

社労士は、労務管理のアドバイスや指導をはじめ、法令に基づいて正しく書類作成などを行う重要な仕事をします。

そのため、毎年幅広い角度や切り口で問題形式が出題される傾向があり、過去問の分析や出題傾向の把握が難しいのが特徴です。

法律や制度に関する専門用語は、そもそも覚えるのが難解ですが、本試験では様々な引っ掛け問題として複雑に出題されることが多いです。

主語や定義、適用条件の引っ掛け問題のほか、架空の規定が出題されるなど、騙されてしまうことも多いと言われています。

条例中に用いられる法律や制度、単語の意味を正しく理解していることが重要で、素早い正誤判断をしなければいけません。

このように、複雑な問題の出題傾向などを完全独学で理解するのは非常に厳しいと分かります。

社労士を独学するのがおすすめできる人

社労士を独学で合格するのは非常に難しいですが、以下のような人にはおすすめです。

  • 総務や人事の実務経験がある人
  • スケジュールの計画など自己管理に自信がある人
  • モチベーションの維持ができる人
  • できる限り費用をかけたくない人

社労士試験では法律や制度に関する専門用語が多く、覚えるのが困難です。

一方、総務や人事での実務経験がある方は基本的な知識は頭に入っている場合も多いため、勉強時間を短縮できる可能性があります。

また、予備校や通信講座のように学習コースが決められていないので、自分で学習計画を立てる必要があります。

そのため、スケジュール計画を立てるなど自己管理に自信がある方や、勉強する時間を充分に確保できる方にはおすすめです。

また、完全独学は通信講座や予備校に比べて費用が抑えられるため、お金をかけたくない方にも魅力的です。

社労士を独学するのがおすすめできない人

社労士の完全独学をおすすめできないのは、以下のような方です。

  • 総務や人事の実務経験がない人
  • 短期間の学習で合格したいと考えている人
  • 毎日コンスタントに勉強時間が確保できない人
  • 自分でスケジュール管理をすることが苦手な人

社労士試験には専門用語や法律、制度など覚えることが多く、総務や人事での実務経験がない完全に初学者の場合は、完全独学は厳しいと言えます。

基本テキストの時点でつまづいてしまうことも多いため、最初から予備校や通信講座を利用する方が効率がいいかもしれません。

また、独学にはスケジュール管理が重要なので、勉強するための時間配分を自分で計画的に考えられないと厳しいでしょう。

それでも完全独学を目指したい方は、1年以上の長期的な学習計画を立てるなど、無理のないスケジュールで勉強することがおすすめです。

独学で必要な勉強時間や具体的なスケジュール

社労士試験は毎年8月に行われるため、試験日までを逆算してスケジュールを立てることが重要です。

一般的に、初学者が社労士試験の勉強をする時間は約1,000時間は必要とされています。

例えば、1ヶ月を30日と仮定し、平日1時間、土日に6時間ずつ勉強すると仮定した場合、以下の通りです。

・平日1時間×21日=21時間

・土日6時間×9日=54時間

1週間に75時間の勉強時間を確保した場合、1年1ヶ月で975時間、1年2ヶ月で1,050時間の学習ができます。

平日と土日での勉強時間の分け方は人によりますが、毎日コンスタントに同じ勉強時間を確保できるのがベストと言えます。

参考までに、期間ごとの1日の勉強時間の目安は以下の通りです。

期間1日の勉強時間合計勉強時間
6ヶ月5.5時間〜6時間990時間〜1,080時間
9ヶ月3.5時間〜4時間945時間〜1,080時間
1年3時間1,080時間
1年半2時間1,080時間
1年3ヶ月2時間〜2.5時間900時間〜1,125時間

以下の記事では、社労士試験に必要な勉強時間についてさらに詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみて下さい。

社労士に合格するための平均勉強時間は?勉強スケジュールを徹底解説

独学をする際の具体的な勉強方法

独学をする際の具体的な勉強方法としては、以下の4つがおすすめです。

  • 独学で使用するテキストを選ぶ
  • テキストを一周して内容を理解する
  • 演習問題を解いてアウトプットする
  • 予備校の模擬試験を受けて苦手分野を対策する

1つずつ解説するので、参考にしてみて下さい。

独学で使用するテキストを選ぶ

社労士試験に独学での合格を目指す場合、まずはテキストを選ぶことから始まります。

社労士のテキストや参考書は比較的多いため、選び方に迷ってしまうかもしれません。

ここで、以下の選び方をするのがおすすめです。

  • 必ず最新のテキストを選ぶ
  • 法改正や白書対策のテキスト、過去問集は別途で購入する
  • 大手資格学校(大原、ユーキャン、LEC、TACなど)が出版しているテキストを選ぶ

社労士試験は法改正の影響を受ける試験なので、必ず最新版のテキストを使用しましょう。

費用を抑えたいからといって、過去のテキストを古本で購入しないように注意して下さい。

初めて学習する場合は、全編フルカラーのものや、図表やイラストが豊富だとイメージをつかみやすいのでおすすめです。

また、大手資格学校が出版しているテキストは、社労士試験の出題傾向に詳しい講師陣の監修のため、信頼性も高いのが魅力。

基本のテキストのほか、法改正や白書、問題集などに関しては別途購入して取り組むのもおすすめです。

テキストを一周して内容を理解する

社労士のテキストは、なるべく早く一周して内容を理解することが大切です。

テキストは分野ごとに熟読しすぎないことがポイントで、まずは早めに全体像を把握して理解度を深めていくことがポイントです。

難しい専門用語に注力してしまうと挫折してしまうため、まずは一通り学ぶことを意識してみましょう。

社労士試験はとにかく学習範囲が広いため、テキストと問題集でインプットとアウトプットを繰り返すことが重要です。

また、テキストは1周だけでなく2周目、3周目と繰り返して回数を重ねるごとに理解できる分野が増えていくと言われています。

まずは一周することを目標にしてみて下さいね。

演習問題を解いてアウトプットする

テキストを読んでインプットができたら、すぐに演習問題を解いてアウトプットすることが大切です。

演習問題を解くことにより、テキストで学んだ内容を正確にインプットできるかの確認ができます。

また、アウトプットすることで苦手な分野に気付けるため、つまづいた箇所に注力して勉強することも可能です。

社労士試験では、それぞれの科目で合格基準点を目指す必要があるため、バランスよく学習し、なるべく苦手な科目を作らないように工夫することも大切です。

予備校の模擬試験を受けて苦手分野を対策する

予備校では、本試験の直前対策として模擬試験を実施していることが多いです。

本試験と同じ形式で実施されるため、ぜひ一度は受けておくことをおすすめします。

本番同様の形式や時間配分に慣れるほか、苦手分野や弱点の克服にも役立ちます。

また、模擬試験を受けると点数や順位が分かり、現時点での自分のレベルを確認することも可能です。

模擬試験で間違えた問題を、試験後に繰り返し復習することで、さらにインプットとあう地プットができるのも嬉しいポイント。

社労士試験は毎年8月下旬に実施されるため、余裕あるスケジュールを立てれば、7月から本試験直前にかけては模擬試験と苦手分野の克服をする時間にできます。

模擬試験は、ぜひ受けておくことがおすすめです。

無料のYouTube動画や学習用アプリなどで、スキマ時間を有効活用

社労士試験に関するYouTubeは数多く配信されているので、まずは気軽に検索してみることをおすすめします。

通信講座の講師による動画や、現役社労士による動画など、YouTubeなら無料で気軽に視聴できるのが魅力です。

イヤホンをすれば通勤中や昼休みなどの隙間時間にもインプットできるので、テキストと一緒に活用してみるのもおすすめです。

他にも、以下のような社労士専用の学習用アプリを使うのもおすすめなので、参考にしてみて下さい。

アプリ名特徴
社労士 秒トレアプリおまかせ出題やおさらい出題、条文穴埋め問題などが豊富で評価が高い
資格の大原 社労士トレ問出題順のシャッフルや苦手問題の絞り込み、学習レポート機能あり
タテスタ社労士・TAC出版のテキストがベース
・スケジュール機能やランキング機能あり
社労士 試験対策学習アプリ・社労士試験の過去問の解説が中心
・時間制限、ミス問題の抽出機能あり

社労士を独学した合格体験記

ここで、社労士を独学で合格した方の体験記をご紹介します。

社労士試験に合格した人が口にする勉強方法3選。

❶テキストを7回は繰り返し読んだ

❷過去問を10回は繰り返し解いた

❸模試の復習を2回は繰り返した

ポイントは「繰り返した」というフレーズ。合格者はとにかく繰り返し、反復している。知識と記憶の定着には反復することに限ります。

引用元:X

テキストや過去問、模試の復習を繰り返し学習することで合格したという声です。

独学合格に必要な参考書【基本テキスト】

結論から言うと何でもOK!自分はTACさんのみんほし社労士を3年間使いましたが、ユーキャンさんやLECさん等どれ使っても合格出来たと思います。

みんほし社労士の基本テキストだけでは合格難しいですが過去問まわしてテキストに書き込めば十分合格できます

引用元:X

市販のテキストを使い合格した方で、テキストの紹介もしているため参考になります。

令和5年の社労士試験の結果です。選択式は高得点ですが択一式がギリギリでした。

選択式は社労士秒トレというアプリをやり込んだおかげです。

約8ヶ月で独学一発合格を果たしましたが、それは地頭がよかったというよりも効果的な勉強法を取り入れただけです。

引用元:X

社労士の学習アプリを使い、8ヶ月という短期間で合格した方で、参考にした書籍も紹介しています。

合格目安勉強時間はウソかマコトか1000時間と言われているようです。

ということは、残り8カ月×30日で割ると、1日4時間の勉強時間で合格できる計算になります。

急な残業や出張で勉強できない日の調整は、休日の勉強時間を8時間にする事で調整はできそうなので、一日の勉強時間の設定を

平日:4時間以上

休日:8時間以上

とすることとしました。

引用元:なつきの資格ラボ>社労士合格体験記

約8ヶ月間の独学で合格した方の体験記です。

平日4時間、休日8時間以上という勉強時間のスケジュールで少々ハードですが、学習アプリも活用しながら時間を効率的に使っていたことが分かります。

社労士を独学した失敗談

過去に独学で社労士合格を目指したものの、挫折してしまったという失敗談がある方は多いようです。

ここで、通信講座スタディングの講座を受けて合格した方の声を参考に、独学で挫折した方々の声をご紹介します。

過去参考書で少し独学で勉強していたこともありましたが、とても難解で挫折した経験がありました。

ゆえに、「講義が動画、アニメーション等でわかりやすいこと」また、試験まで半年をきっていることもあったため「スキマ時間を活用し、繰り返し演習できること」を重視してスタディングさんを選びました。

引用元:スタディング>社会保険労務士講座>合格者の声

独学をしたものの、あまりにも難解で挫折したのち、通信講座で合格したそうです。

令和4年度に独学で半年ほど勉強し、試験を受けましたが、結果は惨敗でした。その後、勉強を辞め、令和5年度は受験せずに過ごしましたが、令和5年10月中旬に再び勉強を始め、令和6年度の合格を目指すことにしました。

一度独学で失敗していたため、今回は外部サービスを利用したいと考え、料金が比較的安かったスタディングを選びました。この選択は本当に良かったと思います。

私は10月中旬から試験日までに1000時間の勉強を目標にしましたが、最終的には1100時間を超えることができました。スタディングはスキマ時間を活用できる仕組みになっているため、1秒も無駄にせずに勉強を進められた結果だと思います。

引用元:スタディング>社会保険労務士講座>合格者の声

スタディングの講座はほんの少しの隙間時間も有効活用できておすすめです!

私は過去に何度か独学で社労士試験を受験したことがありましたが、明らかな勉強不足で落ちました。

今年の5月に今年は腰を据えて勉強しようと思い、通信講座を探した時にスタディングを見つけました。

スタディングに決めた理由はシンプルに価格の安さです。

実際に勉強を始めてみると、通勤時間にちょうど一本の動画がみられるような長さで私にはちょうど良かったと思います。

引用元:スタディング>社会保険労務士講座>合格者の声

独学で勉強不足になってしまい、複数回の受験で挫折した体験談です。

社労士を目指したきっかけは、会社から取得時には15万円の褒賞金がでること、定年退職後にどのような生活が待っているのか不安だったこと(年金等の社会保険)でした。

資格学校の市販本を利用し独学で3回受験しましたが、いずれも選択で足切りとなってしまい、通信講座で何か良いものはないかとネットで調べたところ、評判・価格が決め手でスタディングを選びました。

引用元:スタディング>社会保険労務士講座>合格者の声

市販のテキストを利用し3回の受験失敗で挫折したという方です。

社労士の独学をする際のおすすめテキスト

社労士の独学をする際の、おすすめのテキストは以下の通りです。

  • ユーキャンの社労士 はじめてレッスン
  • 無敵の社労士
  • 通信講座やオンライン講座の教材を使うのも手

1つずつ解説します。

ユーキャンの社労士 はじめてレッスン

テキスト名『ユーキャンの社労士はじめてレッスン』
出版社U-CAN
書籍サイズA5判

『ユーキャンの社労士はじめてレッスン』は、2016年から毎年発売されているテキストです。

全ページフルカラーで、試験や資格についても丁寧に解説しているため、社労士の入門書としても非常におすすめです。

マンガと図表が豊富で読みやすいので、テキストや参考書を読むのに苦手意識を持っている方も使いやすいのが嬉しいポイント。

各ページが2ページ完結のため、1日3レッスンの学習で約1ヶ月で全体の学習像の把握ができ、無理なく基礎力を身に付けることが可能です。

無敵の社労士

テキスト名『無敵の社労士』①〜③
出版社TAC出版
書籍サイズB5判

『無敵の社労士』は、資格の学校TACにより、以下の順番で年3回タイムリーに刊行されるシリーズです。

  1. スタートダッシュ
  2. 本試験徹底解剖
  3. 完全無欠の直前対策

入門編から試験の傾向、過去問の解説や直前対策まで、合格のための知識やノウハウが詰め込まれています。

購入者特典として、書籍連動ダウンロードサービス「重要事項暗記アプリ」が付属しているのも嬉しいポイントです。

通信講座やオンライン講座の教材を使うのも手

社労士試験に合格するには、通信講座やオンライン講座の教材で学習するのもおすすめです。

予備校で通学するよりも料金が抑えられ、教室に通学する手間が省けるのが魅力です。

紙のテキストや問題集は持ち運ぶのが大変ですが、デジタルテキストならスマホ学習もできます。

人事や総務での実務経験があるなど、基本的なインプットができている方は、演習問題や法改正対策を重点的に通信講座で行うなどの使い方もおすすめです。

価格や特徴、サポート体制などを比較し、通信講座を利用するのも検討してみてはいかがでしょうか。