弁理士試験に独学で合格できる?無理と言われる理由も解説


特許・商標など知的財産権に関する手続きなどを行う弁理士は、資格試験の合格率が10%未満の難関資格です。
一般的には2,000時間から3,000時間の勉強時間が必要とされており、これから学習を始める方にとっては独学で取得できるのかは気になるところではないでしょうか。
そこで本記事では、弁理士資格が独学で取得できるのかについて解説します。
結論からいえば、独学での取得は不可能ではありませんが、難易度が相当高いので、独学するとしても通信講座を使っての独学が必須です。
独学で取得するためのコツも紹介するので、弁理士資格の取得を目指している方は参考にしてください。
なお、3,000時間の学習が終わるには、1日何時間独学すべきかを下記ツールで計算できるので、合わせてお使いください。
目次
弁理士に独学で合格するのは無理と言われる理由
弁理士試験に独学で合格するのは無理といわれることがありますが、理由はおもに以下の3点からです。
- 論文式は添削を受けないと合格水準に達しないから
- 市販のテキストや教材が少ないから
- 1年に1度しかチャンスがなく、モチベーションが続かないから
学習の難しさと膨大な試験範囲が難点となっており、それが独学が難しい理由です。
逆に言えば、上記をクリアできれば独学も不可能ではないため参考にしてください。
論文式は添削を受けないと合格水準に達しないから
弁理士試験は択一式の短答式試験、論文式試験、口述試験の3つに合格することで資格を取得できます。
中でも論文試験は、法律の解釈などを根拠に基づき論ずる必要があるため、短答式のように明確な答えがありません。
一般的な解答はあるものの、自身で添削しながら学習するのが困難なため、独学で学習しにくい要因となっています。
短答式は独学で学習したとしても、論文式については予備校や通信講座などで過去の実績や傾向に基づいた添削をしてもらいましょう。
市販のテキストや教材が少ないから
弁理士試験の場合、簿記や宅建、FPといった知名度が高く受験者も多い資格と比べると、市販の教材やテキストが少ないのも特徴です。
全く無いわけではありませんが、教材が少ないと試験範囲を網羅できないため注意が必要です。
また、弁理士は法律を扱う資格のため、法改正などに対応した最新のテキストで学ぶことが前提です。
購入時は販売されているテキストがいつの出版なのか、法改正に対応しているのかなどの確認を行ってください。
予備校や通信講座であれば、教材は基本的に最新版にアップデートされているはずなので、余計な確認の手間が軽減できるのもメリットとなっています。
1年に1度しかチャンスがなく、モチベーションが続かないから
弁理士試験の合格に必要な学習時間は2,000時間~3,000時間程度とされており、試験は年に1回だけです。
毎日8時間勉強しても1年以上かかるため、年1回の試験に落ちてしまうとモチベーションが続かない可能性があります。
予備校などを利用すると定期的な面談などフォロー体制が整っており、学習進捗の確認や学習内容に関する悩み相談などもできるため、講師と二人三脚で学習を進められるのが利点です。
モチベーションを維持しやすいため、一人では途中で挫折しそうという方に向いています。
また、学習を効率的に進め、少しでも短期間で合格を目指せるという観点からも、学習ノウハウを持っている予備校などを利用するのがよいでしょう。
弁理士試験を独学した人の合格体験記や体験談ブログ
弁理士試験を独学した人の合格体験記や体験談ブログをいくつか紹介します。
弁理士資格取得は「不要不急」だが「関心あり」、だがコストはかけられない……という状況に対し、「コストをゼロにはできなかろうが、支出総額や単位期間あたりの労力(時間的占有率や強度)を小さくできる。それによって体感コストを下げられる」と思っています。それが独学ならやりやすいよ、という紹介でした。※一部抜粋
引用元:気楽に! 独学突破の弁理士試験
独学での合格を果たした方のnoteからの引用です。
弁理士試験の合格は、関心があるといった程度で、マストで合格したいというわけではない方にとってはコストを抑えられる独学は向いているという内容です。
独学を6ヶ月続けて過去問を1周した結果、合格する姿が全く見えませんでした。
雰囲気は分かったけど、問題を解くレベルの理解まで到達できない、という感じです。
また、勉強が進むにつれて、早期合格して受講料などを回収する方が良いと考えるようになりました。
※一部抜粋
引用元:弁理士試験の時系列(1/5 独学編)
独学への合格は無理だと感じた方のnoteです
確かに独学なら費用は抑えられるものの、早期合格したうえで弁理士として活動し、受講料をペイする方が効率的という意見もあります。
それまで短答の勉強しかしていなくて、短答式試験に受かってから論文の勉強をスタートしたんです。「論文の答案を一文も書いたことがない」「本当に何をしたらいいのか分からない」という状態で始めて、最初の論文式試験はそのまま落ちました。インターネットで見た書き方のノウハウを参考にして勉強もしましたが、やはり全くうまくいかなくて・・・。
<中略>
そこで「これからどうしようかな」と迷いまして。同じ講座を取ってもう一度同じ内容を勉強し直すというより、どちらかというと「添削を受けたい」「別の問題を解きたい」という思いがあったので「論文ゼミ」を受講しました。
※一部抜粋
引用元:資格スクエア 合格体験記
資格予備校の「資格スクエア」で合格した方の体験記です。
短答式を独学で突破したものの、論文式に落ちてしまったので論文の講座を受講されています。
独学での論文式の学習は添削が課題になるため、予備校や通信講座の利用はおすすめです。
#弁理士試験 短答
合格確定の方おめでとうございます!
中には論文対策ゼロの人もいるでしょう(我等3人そう)
ここから今年の論文突破も十分あり!がんばってください!
短答後に論文対策を始めてその年受かった狐林氏🦊談は
「過去問と条文。過去問を参考に趣旨系押さえる」
です!!!
引用元:独学で弁理士試験な勤め人 制作部|X
弁理士試験を独学で合格した方が、漫画形式でレポしています。
過去問が大事とのことで、まず過去問をしっかり解いたことがない人は、過去問を解いていることから始めてみてください。
私の兄は、弁理士になるのに独学で5年かかりました。合格率3%、並大抵の努力でないようでした。
引用元:Yahoo!知恵袋
独学で弁理士になるのは困難で、数年単位でかかる方もいます。
モチベーションを維持して学習を続けられるかがポイントとなります。
弁理士試験に1年で合格するためのスケジュール
弁理士試験に1年で合格するためのスケジュール感について解説します。
まず前提として、弁理士試験には以下の3つの試験を順番に突破する必要があることを押さえてください。
試験形式 | 試験時期 | 合格率 |
---|---|---|
短答式(1次) | 例年5月ごろ | 12.8% |
論文式(2次) | 例年7月ごろ | 27.5% |
口述式(3次) | 例年10月ごろ | 90.2% |
各試験を突破しなければ次の試験へは移れませんが、短答式や論文式は一度合格すると2年間試験が免除されます。
そのため、まずは最も合格率の低い短答式の突破を目指しましょう。
平日もまとまった時間が確保できる学生の場合
平日でもまとまった時間が確保できる学生が1年で合格を目指すには、口述試験が行われる10月の1年前。11月から学習を開始します。
11月から5月までを短答式の学習に充て、試験後から7月まで、論文式の学習を行ってください。
その後、7月から10月で口述試験の対策に移ります。
1年間で3,000時間の学習時間を確保する必要があるため、1日8時間から9時間程度の学習時間を確保する必要があります。
平日にもまとまった学習時間を確保できるなら1年での合格も視野に入るため、毎日学習するクセをつけるのを意識しましょう。
働きながら挑戦する社会人の場合
働きながら弁理士試験の突破を目指す場合、スキマ時間を確保することが重要なポイントです。
1年間なので、スケジュール感は学生と同様ですが、いかに平日の外出中や休憩中、移動中などに勉強できるかを考えましょう。
一見働きながらの試験合格は不可能そうに思えますが、弁理士試験の合格者の8割以上は社会人です。
参考元:特許庁 令和6年度弁理士試験統計
すべてが独学での合格者というわけではありませんが、働きながらの合格も十分に目指せるので計画的に学習を行いましょう。
学習時間の確保が難しい場合は、試験免除期間を利用し、1年目に短答式の突破を、2年目に論文式と口述式の突破を目指すプランも検討してください。
弁理士試験の勉強法
弁理士試験の勉強法について、各試験形式ごとに解説します。
- 短答式試験
- 論文式試験
- 口述試験
まずは短答式の突破を目指すことが重要ですが、合格後スムーズに次の試験対策に移れるよう、学習方法をあらかじめ確認しておきましょう。
短答式試験
短答式試験の学習範囲は以下の通りです。
- 特許法・実用新案法
- 意匠法
- 商標法
- 条約
- 著作権法
- 不正競争防止法
3.5時間で全60問の5択問題が出題され、7割程度の正答率が合格ラインです。
過去問を中心に何度も繰り返し解き、数をこなすことを意識しましょう。
また、制限時間内に解き終えることも重要なので、模試などを積極的に受験して本番環境に慣れてください。
独学であっても、予備校などで開催される模試のみ受験できる場合があるので、必ず使うべきです。
論文式試験
論文式試験は、必須3科目と、6つの選択科目のうち1つに合格する必要があります。
論文式試験の試験内容は以下のとおりです。
必須科目 | ・特許法/実用新案法:2時間 ・意匠法:1.5 時間 ・商標法:1.5 時間 |
---|---|
選択科目 | 以下から1科目を選択:1.5時間 ・理工I(機械・応用力学) ・理工Ⅱ(数学・物理) ・理工Ⅲ(化学) ・理工Ⅳ(生物) ・理工Ⅴ(情報) ・法律(弁理士の業務に関する法律) |
設問をもとに各法解釈などについて論ずる問題で、前述のとおり明確な解答が無い点に注意が必要です。
独学で学習する場合は、模試などの模範解答を参考にロジックを理解する必要があります。
自身での添削が難しいため、独学を突破できた方は論文式だけは予備校などを活用することも検討しましょう。
口述試験
口述試験は、面接官との対話による試験で、以下の3科目から各10分程度で出題されます。
- 特許法・実用新案法
- 意匠法
- 商標法
質問に対して正確に答えることが重要ですが、論文式を突破できた方の多くは口述試験を突破できるだけの知識を習得できているはずです。
しっかりと準備を行い、繰り返し音読したり場慣れしたりといった対策が有効です。
口述試験も予備校などで対策講座が開かれていることがあるため、独学での自信が無い方は利用しましょう。
弁理士試験の市販のテキストや教材
弁理士試験の学習におすすめの、市販テキストや教材を紹介します。
- メインテキストや法文集
- 短答式や論文式の問題集
- 有料のオンライン講座
- YouTubeチャンネル
どのテキストを購入すればよいか迷った場合はぜひ参考にしてみてください。
メインテキストや法文集
メインテキストは大手予備校で、弁理士の対策講座も開講しているTACから購入できます。
- 弁理士試験 エレメンツ1 特許法/実用新案法 第12版
- 弁理士試験 エレメンツ2 意匠法/商標法 第11版
- 弁理士試験 エレメンツ3 条約/不正競争防止法/著作権法 第11版
実際の講座でも利用されており、最新の法令が記載されているため安心して利用可能です。
法令の全体像をつかめるよう図表を用いてシンプルに解説されているだけでなく、条文を適宜記載しているのでひとつずつ理解しながら学習を進められる工夫が行われています。
短答式や論文式の問題集
短答式も論文式も、過去問を中心に解いていくのが効率的です。
おすすめは、大手資格予備校LECから販売されている以下の問題集です。
- 短答式:2025年版 弁理士試験 体系別 短答過去問
- 論文式:2024年版 弁理士試験 年度別論文過去問
短答式は10年分、論文式は7年分の過去問が掲載されており、特に論文式は模範解答が独学で学習する際の参考になります。
基本的に論文式は予備校などの利用がおすすめですが、どうしても独学で学習したい場合は活用してください。
有料のオンライン講座
市販テキストはあまり豊富ではないため、オンライン講座の利用も検討しましょう。
以下は弁理士試験対策講座のおすすめ3選です。
弁理士オンライン講座 | 料金(税込) | 特徴 |
---|---|---|
アガルート | 148,000円~ | 合格率34.4%と全国平均の5.6倍 |
スタディング | 79,000円~ | 価格が安くアプリで学習が完結 |
LEC | 395,000円~ | 2017~2023年の初回受験合格者5人に4人がLEC出身 |
合格率が高いアガルートやLECは手堅く合格を目指したい方に向いています。
もしくは、費用をできるだけ抑えたい方は、アプリで学習を完結できるスタディングの利用も検討しましょう。
以下の記事でも詳しく解説しているため、独学にするか通信講座を利用するか迷っている方は確認してください。
YouTubeチャンネル
YouTubeなどで動画学習をする方も中にはいます。
ただし、情報が最新でない場合もあるため、補足的に使用する程度に留めておくのがよいでしょう。
たとえば、以下のチャンネルは特許事務所が開設する信頼性の高い動画で再生数も伸びていますが、投稿されたのは 2021年です。

現在の法令と差異がある可能性もあるため、学習方法の参考などにはよいですが、細かな部分は必ず最新の参考書などで裏どりをしてください。
弁理士試験は独学よりも通信講座での学習がおすすめ
本記事では、弁理士試験が独学で学習できるのかについて解説しました。
弁理士試験は合格率10%程度の難関試験で、特に添削の難しい論文式試験を独学で学習するのは困難です。
また、学習時間が3,000時間程度必要とされているため、モチベーション維持や効率的な学習の観点からも、予備校や通信講座の利用を検討しましょう。
どうしても独学で学習したい場合は、論文式のみオンライン講座を受講するといった手段もおすすめです。
独学か通信講座・予備校かで迷っている方は、以下の記事も参考にしてください。