公認会計士の難易度は高い?やめとけと言われる理由も解説

最終更新日:2024-12-13

会計関連資格の最高峰であり、「財務諸表監査」などの独占業務を持つ「公認会計士」の資格。

合格率7%と難易度が高く、「やめとけ」といわれる声も見られる難関資格です。

そのような公認会計士資格ですが、実際のところ、どの程度の難易度なのかピンとこない方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、公認会計士資格の難易度について解説します。

「やめとけ」といわれる理由も紹介するので、公認会計士の資格取得を目指すか悩んでいる方は参考にしてください。

なお、公認会計士試験の難易度から独学は無謀と言えるので、公認会計士通信講座を使うことをおすすめします。

合格率から見る公認会計士試験の難易度

合格率から見る公認会計士試験の難易度について、1次試験と2次試験それぞれ解説します。

  • 短答式試験(1次試験)
  • 論文式試験(2次試験)

これから学習を始める方は、どの程度の難易度なのかを事前に確認しておきましょう。

短答式試験(1次試験)

短答式試験の、近年における合格率推移は以下のとおりです。

年度合格率
令和6年第2回9.4%
令和6年第1回10.7%
令和5年第2回8.8%
令和5年第1回10.3%
令和4年第2回7.9%
令和4年第1回12.0%
令和3年21.6%
令和2年第2回12.8%
令和2年第1回15.7%
引用元:金融庁 公認会計士試験

令和3年(2021年)は、新型コロナウイルスの影響により1回のみの開催です。

近年の短答式試験合格率は10%前後と、難易度が高いのが分かります。

なお、短答式試験に合格すると2年間有効で、その間に論文式試験に合格すればOKです。

論文式試験(2次試験)

論文式試験の、近年における合格率推移は以下のとおりです。

年度合格率
令和6年36.8%
令和5年36.8%
令和4年35.8%
令和3年34.1%
令和2年35.9%
引用元:金融庁 公認会計士試験

論文式試験だけの合格率でみると、35%前後と高めです。

公認会計士試験全体での平均合格率は7%前後ですが、難易度が高いのは論文式よりも短答式であることがわかります。

必要な勉強時間から見る公認会計士試験の難易度

一般的に、公認会計士になるために必要な学習時間は、2,000時間〜3,000時間程度とされています。

税理士試験の学習時間が4,000時間ほどで、日商簿記1級が600時間と考えると、公認会計士は税理士試験ほどではないにしろ、長期に渡る学習が必要となります。

1日6時間勉強しても500日かかるため、2年近く学習が必要となるため、学習計画のマネジメントが重要です。

他の難関国家資格と難易度を比較

他の難関国家資格と難易度を、以下の2パターンに分けて解説します。

  • 税理士と公認会計士はどちらが難しい?
  • 弁護士と公認会計士はどちらが難しい?

いずれも難易度が高い資格ですが、その分転職や独立などが期待できる資格となっています。

どの資格を取得するか迷っている方は参考にしてください。

税理士と公認会計士はどちらが難しい?

税理士資格の合格率などを比較すると以下のようになります。

資格公認会計士税理士
合格率約7%約15%
学習時間の目安3,000時間4,000時間
取得要件短答式と論文式の両方に合格
※短答式は2年間合格が有効
11科目中必修2科目を含む5科目に合格
※合格科目は生涯有効
受験資格無し以下のいずれかの要件を目指す
・学識
・資格
・職歴
・認定
試験科目■短答式:
・財務会計論
・管理会計論
・監査論
・企業法

■論文式:
・会計学
・監査論
・企業法
・租税法
・民法、経済学、経営学、統計学のいずれか
■必須科目:
・簿記論
・財務諸表論

■選択必須科目:
・法人税法または所得税法のいずれか

■選択科目:
・酒税法または消費税法のいずれか
・国税徴収法
・固定資産税
・事業税または住民税のいずれか

試験方式や範囲が異なるため、一概にどちらが難しいとは断言できません。

合格率は公認会計士の方が低いので一見難易度が高く見えますが、公認会計士試験は短答式試験の合格有効期間が2年間であり、その間に論文試験に合格する必要があるためです。

短答式合格から短期間で取得を目指す必要がある点や、受験資格が無く誰でも受験できる点が、合格率が低くなる要因です。

一方で、税理士試験は合格科目は生涯有効なので、長い時間をかけて取得を目指せる点が、合格率が高くなる原因となっています。

必要な学習時間は公認会計士よりも多いため、自身に合った資格を選択しましょう。

弁護士と公認会計士はどちらが難しい?

続いて、弁護士と公認会計士はどちらが難しいかを比較します。

資格公認会計士弁護士
合格率約7%約40%
学習時間の目安3,000時間8,000時間
取得要件短答式と論文式の両方に合格
※短答式は2年間合格が有効
短答式と論文式の両方に合格
受験資格無し法科大学院修了または予備試験への合格
※5年間有効
試験科目■短答式:
・財務会計論
・管理会計論
・監査論
・企業法

■論文式:
・会計学
・監査論
・企業法
・租税法
・民法、経済学、経営学、統計学のいずれか
■短答式
・民法
・憲法
・刑法

■論文式
・憲法
・行政法
・民法
・商法
・民事訴訟法
・刑法
・刑事訴訟法
・選択科目

弁護士の合格率は意外にも高く、40%程度となっています。

しかし、司法試験には受験資格があるため、受験する方はある一定レベルの知識を持っている前提です。

公認会計士試験には受験資格が無いため、誰でも受験できることが合格率を下げる要因となっています。

必要な学習時間からも、弁護士資格の方が難易度が高いと考えてよいでしょう。

公認会計士を大学受験の偏差値で例えると?

公認会計士試験を大学受験の偏差値で例えると、65程度です。

慶応や早稲田出身の大学生が多いことがその理由として挙げられます。

公認会計士試験の講座を提供している大手予備校TACでも、2022年公認会計士試験における慶應義塾大学の在学・出身受講生の合格率は60.5%となっています。

大学受験とは試験内容がまるで異なるため一概に比較はできませんが、目安程度に捉えておきましょう。

公認会計士の合格率・合格者数が多い大学は?

公認会計士の合格率・合格者数が多い大学をピックアップすると以下の通りです。

順位大学令和4年度合格者数
1位慶應義塾187人
2位早稲田109人
3位明治86人
4位東京57人
5位中央54人
6位立命館54人
7位神戸50人
8位京都47人
9位同志社44人
10位一橋38人
引用元:公認会計士第2次試験及び公認会計士試験 大学・年度別合格者数一覧表

慶応や早稲田出身の方が多くなっています。

上記の数値からも、レベルとしては同じくらいと考えてよいでしょう。

公認会計士の難易度が高い理由

公認会計士の難易度が高い理由は以下の2点からです。

公認会計士は難関資格なので、ポイントを押さえて効率よく学習を進めてください。

  • 膨大な学習範囲と専門知識の深さ
  • 短答式と論文式、両方の対策が必要

膨大な学習範囲と専門知識の深さ

公認会計士は会計関連資格の最高峰ということもあり、深い専門知識と広範囲に渡る学習が必要です。

公認会計士試験の学習範囲は以下の通りです。

短答式・財務会計論
・管理会計論
・監査論
・企業法
論文式・会計学
・監査論
・企業法
・租税法
・民法/経済学/経営学/統計学のいずれか選択

それぞれに専門知識を問われるため、必然的に学習時間が長くなります。

短答式と論文式、両方の対策が必要

公認会計士試験では、短答式と論文式それぞれに対策が必要です。

論文式を受験するには短答式の合格が必要で、短答式は合格から2年間が有効期限です。

論文式合格までの猶予が2年ということなので、並行して学習が必要な点が難しいポイントとなっています。

税理士などであれば合格科目は生涯有効なため、時間をかけて合格を目指す戦略がとれます。

公認会計士は短期間で合格を目指さなければならない点を押さえておきましょう。

公認会計士の独学は無謀である理由

公認会計士の独学は困難で、その理由は以下の3点からです。

  • 学習内容の理解が追いつかない
  • 年単位の学習計画を立てるのが難しい
  • 論文式試験の添削が受けられない

絶対に不可能とまでは言い切れませんが、基本的には通信講座や予備校などを活用するのがおすすめです。

理由について詳しく解説します。

学習内容の理解が追いつかない

公認会計士試験は学習範囲が膨大で、法律に絡む点から最新の情報を取得しておく必要があります。

独学では情報収集と内容理解が追い付かず、要点をまとめて漏れなく情報を提供してくれる予備校に比べると非効率的です。

長期に渡る学習なので、効率よく学習を進めなければ試験範囲を学習し終えるだけでも困難です。

過去の実績やノウハウを元にカリキュラムを提供してくれる通信講座や予備校を活用しましょう。

年単位の学習計画を立てるのが難しい

公認会計士試験の学習は年単位に及ぶため、学習計画を立てるのが難しくなります。

また、学習期間中のモチベーション管理や進捗管理など、合格に向けて計画的に進める必要があります。

通信講座などであれば、講師への個別相談や学習進捗を管理できる教材などが提供されているケースがあるため、学習に専念しやすいです。

自分で2年間前後におよぶ学習計画を立てる自信が無い方は、通信講座などを選択しましょう。

論文式試験の添削が受けられない

公認会計士試験には論文式試験があり、自身での添削が難しい点が、独学を困難にしている理由のひとつです。

論文式は絶対的な答えがないため、添削指導を受けられる通信講座などで学習を進める必要があります。

場合によっては論文式だけの講座が提供されている予備校などもあるので、必要に応じて選択してください。

公認会計士はやめとけと言われる理由

公認会計士試験について、「やめとけ」といわれる理由は主に以下の3点からです。

  • 難易度が高い
  • 繁忙期は激務
  • 業務に合う合わないがある

まずは難易度の高さと膨大な学習時間です。

また、合格したとしても決算などの繁忙期は激務になり、一人当たりが負う責任も大きくなります。

業務自体は帳簿や文書の作成など単調なルーチンワークも多いため、人によってはやりがいを感じない方もいるでしょう。

ただし、経理・会計・税務などの関連の職種は多かれ少なかれ似たような点はあるため、「公認会計士だからやめておいた方が良い」とまではいえません。

あくまでも、自身に向いているか、合格を目指すモチベーションがあるかで判断してください。

それでも公認会計士を目指すメリット

公認会計士を目指すメリットももちろんあります。

たとえば以下のような点です。

  • 給与が高い
  • キャリアの選択肢が増えて独立もできる
  • 社会的な信頼度も高い

公認会計士ともなれば、会計事務所からコンサルティングファーム、あるいは独立起業までさまざまな選択肢が広がり、社会的な地位も高まります。

また、給与も高く、公認会計士(税理士含む)の平均賃金は約922万円です。

引用元:令和5年 厚生労働省 賃金構造基本統計調査

初任給こそ550万円ほどですが、キャリアを積むことで高年収が期待できるのが利点となっています。

公認会計士の難易度は高いが見合った価値も得られる資格

本記事では、公認会計士の難易度について解説しました。

公認会計士試験の難易度は確かに高いですが、それに見合った価値も得られる資格です。

合格率7%の難関資格のため「やめとけ」といわれることもありますが、得られる給与やキャリアパスなどは魅力的なので、ぜひ目指してみてください。

独学は論文試験対策や学習量などの観点から無謀なので、通信講座や予備校を活用して学習するのがおすすめです。