税理士試験の科目はどう選ぶ?各科目の難易度や合格率、組み合わせ方を解説

最終更新日:2024-12-05

「税理士試験の科目はどう選ぶと受かりやすいのか?」

「試験科目を難易度だけで選んだら、将来の実務に影響が出るんじゃないか」

「大学院での試験免除制度は実際ありなのか?」

こういった疑問にこたえます。

税理士試験は、独占資格が認められていて独立もできる難関国家資格です。

その試験に合格するには多大な努力が必要で、10年かけても取れないという人も珍しくありません。

今回は、税理士試験の試験科目について解説します。

なお、税理士は独学で合格する人はほとんどいません。

税理士通信講座などを利用しながら、1科目ずつ着実に合格を狙っていきましょう。

税理士試験における科目

税理士試験は、税務の専門家である税理士になるために必要な国家試験です。

この試験では税法や会計学に関する高度な知識が問われるため、生半可な気持ちでは受からない超難関資格です。

なお、受験資格にはいくつかの要件がありますが、2つの会計科目については、誰でも受験ができます。

3科目の税法科目を受験する際には、大学などで社会科学に属する1科目の履修が必要です。

さらに、公認会計士や弁護士資格を持つ者は一部試験が免除される特例もあります。

詳しくは「税理士試験|国税庁」をご確認ください。

試験では会計学と税法に分類される11科目が用意されており、その中から受験者は5科目を選択して受験します。

まず、必須科目として下記2科目があります。

  • 簿記論(会計学)
  • 財務諸表論(会計学)

さらに税法に関連する下記科目の中から3科目を選択します。

  • 所得税法
  • 法人税法
  • 相続税法
  • 消費税法または酒税法(どちらか1つ)
  • 国税徴収法
  • 住民税または事業税(どちらか1つ)
  • 固定資産税

なお、所得税と法人税は選択必修科目になるので、どちらかは必須です。

また、税理士試験の特徴のひとつに科目合格制度があります。

この制度により、一度合格した科目は永久に有効となるため、全科目を一度に合格する必要はありません。

この仕組みにより、受験生は自分のペースで試験に挑戦することができます。

試験の実施時期は毎年8月で、結果発表は12月頃に行われます。

合格率は10~20%程度と難関試験に分類されるため、特に税法科目は十分な対策が必要です。

税理士試験に合格した後は、税務の実務経験を2年以上積むことで税理士資格を取得できます。

そして、日本税理士会連合会に登録することで正式に税理士として活動する道が開けます。

このように、税理士試験は専門知識が問われる厳しい試験ですが、合格すれば生涯にわたって心強い、難関国家資格が手に入ります。

税理士試験の必修科目の勉強時間や特徴

まずは、必修の会計科目には2つあり、これらの詳細をみていきましょう。

  • 簿記論(会計学)
  • 財務諸表論(会計学)

簿記論

簿記論は税理士試験の必須科目の一つで、会計の基礎となる仕訳や財務諸表の作成に関する知識を問われる科目です。

試験内容は主に商業簿記と会計学で、仕訳や勘定記入、試算表の作成、原価計算など、理論と計算の両方を含みます。

特に計算問題の比率が高いため、スピードと正確さが求められる科目と言えます。

簿記論の合格率は例年20%程度と他の科目と比べると比較的高く、基礎的な科目です。

簿記2級や1級の知識がある人にとっては取り組みやすい科目ですが、初心者には基礎から学ぶ必要があるため、負担が大きくなることもあります。

合格に必要な勉強時間は300~500時間程度が目安とされますが、簿記経験の有無や学習の進め方によって異なります。

簿記2級以上の知識がある場合は200~300時間で対応できることもありますが、初心者の場合は400~500時間程度を見積もる必要があります。

学習のポイントとしては、計算問題を繰り返し解いてスピードを養うこと、理論部分を要点を押さえて暗記することの2点です。

また、模試や過去問を活用して試験形式に慣れることも重要です。

簿記論は税理士試験の基礎となる科目なので、暗記で乗り切らず、しっかり細部まで理解することをおすすめします。

財務諸表論

財務諸表論は、税理士試験の必須科目の一つで、企業の財務情報を正確に作成し、分析するための知識を問われる科目です。

この科目では、財務諸表の作成方法や会計基準に基づく理論、具体的な処理方法が出題されます。

試験内容は、理論問題と計算問題に分かれており、理論部分では会計の基本的な考え方や会計基準に関する記述が求められます。

一方、計算問題では、財務諸表の作成や各種会計処理を正確に行うスキルが問われます。

財務諸表論の特徴は、理論問題の比重が大きいことです。

そのため、理論を深く理解し、自分の言葉で説明できるようになることが重要です。

試験の難易度は高く、合格率は例年10~15%程度で、理論と計算の両方をバランスよく学ぶ必要があります。

合格に必要な勉強時間は、簿記論と同じく300~500時間程度が目安とされています。

簿記3級や2級の知識がある人にとっても、財務諸表論の理論問題は初めて学ぶ内容が多いため、しっかりとした対策が求められます。

学習方法としては、理論部分を体系的に理解し、暗記に頼らず本質を押さえることが大切です。

また、計算問題については、簿記論と同様に繰り返し練習し、正確さとスピードを身につける必要があります。

財務諸表論は、会計の基本的な理論と実務に直結する知識を学べるため、税理士試験の中でも重要な科目の一つです。

簿記論と内容が近いので、一緒に簿財として予備校や通信講座の科目になっていることが多いです。

簿記論とあわせて、計画的に学習を進めると、効率的に合格に近づくことができます。

税理士試験の選択必修科目の勉強時間や特徴

次に選択必修科目の2科目を紹介します。

  • 法人税
  • 所得税

どちらかを必ず選ぶ必要があります。

両方かなり広範囲な試験範囲になるので、両方選ぶ人はほぼおらず、片方を選ぶケースが多いです。

法人税

法人税法は、税理士試験の選択必須科目の一つで、法人税に関する知識や計算方法を学ぶ科目です。

この科目では、法人の所得計算や課税方法、納税額の算出手順などが問われ、実務に直結する重要な内容が含まれています。

試験内容は理論問題と計算問題の両方で構成されており、理論問題では法人税法の規定や税務に関する原則的な考え方を説明する力が求められます。

計算問題では、課税所得の計算や税額控除、欠損金の繰越控除などの実務的な計算が中心となります。

法人税法は、法人向けの税務業務をしたい税理士にとって、働く上での基礎的な知識を問われます。

出題範囲が広く難易度は高いため、すべての論点を網羅できるよう長期間での学習が必要です。

合格率は例年10%前後と低く、税理士試験の中でも難関科目の一つとされています。

合格に必要な勉強時間は400~600時間程度が目安とされており、税法初心者にとっては計算と理論を同時に学ぶ必要があるため負担が大きいです。

学習のポイントとしては、まず理論の基本的な条文を理解し、それを暗記するだけでなく具体例を通して応用力を身につけることが大切です。

計算問題では、基本的な仕訳や法人税計算の手順をマスターし、問題演習を繰り返して実務に近い感覚を養うことが重要です。

また、過去問や模試を解きながら出題傾向を分析し、試験の時間配分に慣れることも効果的です。

法人税法は学習範囲が広い分、しっかりと計画的に取り組むことで合格への道が開けます。

税理士としての実務能力を高めるためにも、この科目を通じて法人税に関する深い知識を習得することが求められます。

所得税

所得税法は、税理士試験の選択必須科目の一つで、個人の所得に関する税法の知識や計算方法を学ぶ科目です。

この科目では、所得税の仕組みを理解し、所得の分類、課税所得の計算、税額控除や税務調整といった幅広い内容が出題されます。

試験は理論問題と計算問題で構成されており、理論では所得税法の条文や基本的な原則を理解し、それを正確に説明する能力が求められます。

計算問題では、給与所得、事業所得、譲渡所得など、各種所得の計算方法や総合課税の仕組みを正しく適用するスキルが問われます。

所得税法は個人に関する税法の中核を担う科目であり、実務においても重要な知識となるため、難易度が高い科目の一つです。

出題範囲が広く、各所得区分ごとに異なる計算ルールや税額調整方法を正確に理解する必要があります。

合格率は10%前後で、計算と理論の両面から深い理解が求められるため、受験生にとっては大きな挑戦となります。

合格に必要な勉強時間の目安は400~600時間程度とされ、特に税法初心者には多くの時間と労力を要します。

学習のポイントとしては、まず所得税の基本的なルールを理解し、各所得区分の特徴を正確に把握することが重要です。

理論部分では、所得税法の条文を暗記するだけでなく、具体例を交えて理解し、応用力をつけることが必要です。

計算問題では、基本的な計算手順を繰り返し練習し、複雑なケースにも対応できる力を養うことが求められます。

過去問や模試を活用して、出題傾向や試験の時間配分に慣れることも重要な学習戦略です。

所得税法は範囲が広く細かい知識が問われるため、効率的に計画を立てて学習を進めることが合格のカギとなります。

この科目を学ぶことで、個人の所得に関する税務処理能力を身につけ、税理士としての実務能力を高めることができます。

税理士試験の税法科目の勉強時間や特徴

最後に、下記の税法科目から2科目選ぶ必要があります。

  • 相続税法
  • 消費税法
  • 酒税法
  • 国税徴収法
  • 住民税
  • 事業税
  • 固定資産税

相続税法

相続税法は、税理士試験の選択必須科目の一つで、相続税や贈与税に関する知識を学びます。

この科目では、相続財産の評価方法や課税対象の判定、税額計算の手順などが問われます。

試験は理論と計算で構成され、理論では相続税法の条文や原則の理解、計算では財産評価や税額控除の実務的な処理が求められます。

合格率は10%前後と難易度が高く、特に財産評価のルールが細かいため深い理解が必要です。

勉強時間の目安は400~600時間程度で、理論と計算のバランスを意識した学習が重要です。

過去問や模試を活用して、複雑なケースに対応できる実力を身につけることが合格への近道です。

消費税法

消費税法は、税理士試験の選択科目の一つで、消費税や地方消費税に関する知識を学びます。

この科目では、課税対象や非課税取引の判定、税額計算の手順、税務調整などが問われます。

試験は理論問題と計算問題で構成され、理論では消費税法の基本的な条文や制度の理解、計算では仕入税額控除や簡易課税制度の適用が求められます。

合格率は例年10~15%程度で、消費税特有のルールや税額計算の正確さが試験のポイントとなります。

税法科目の中では比較的難しくない部類とされる一方、実務でも必須の分野なので、選ぶ人が多いです。

勉強時間の目安は300~500時間程度で、特に計算問題を中心に繰り返し練習することが重要です。

過去問や模試を活用し、時間配分に慣れるとともに、出題傾向を把握することで効率的に学習を進められます。

消費税法を学ぶことで、実務に直結するスキルを習得し、税理士としての専門性を高めることができます。

酒税法

酒税法は、税理士試験の選択科目の一つで、酒類に関する税金の計算や制度を学ぶ科目です。

この科目では、課税対象となる酒類の種類や課税方法、税額の計算手順、免税や還付の制度などが問われます。

試験は理論問題と計算問題で構成され、理論では酒税法の基本条文や税制度の仕組みを理解し、計算では酒類の分類や数量に基づく税額算出のスキルが求められます。

合格率は10~15%程度で、範囲が比較的狭い分、細かい知識や正確な計算が重視されるのが特徴です。

勉強時間の目安は200~400時間程度と、税法科目の中では負担が軽い方ですが、効率的な学習計画が必要です。

過去問や模試を活用して、出題傾向を把握しつつ、理論と計算の両方をバランスよく学ぶことが合格への鍵となります。

酒税法は、専門的な分野ながら、正確な知識を身につけることで税務の幅を広げられる科目です。

国税徴収法

国税徴収法は、税理士試験の選択科目の一つで、国税の徴収や滞納処分に関する法律や手続きについて学ぶ科目です。

この科目では、国税の徴収方法や優先順位、財産の差押え、滞納処分、滞納者の財産調査などが主なテーマとなります。

試験は理論問題が中心で、国税徴収法の条文を理解し、それを具体的な事例に適用する能力が求められます。

計算問題はほとんど出題されないため、理論重視の学習が必要ですが、手続きや条文が細かく、暗記に頼るだけでは対応が難しい科目です。

合格率は例年10%前後で、理論科目としてはやや難易度が高い部類に入ります。

勉強時間の目安は300~500時間程度とされ、特に条文の正確な理解と、事例問題への応用力を磨くことが重要です。

過去問や模試を活用して、条文の出題傾向を把握し、具体的な事例問題に繰り返し取り組むことで合格に近づけます。

国税徴収法は、税務の実務においても重要な知識となるため、税理士としてのスキルを高めるために欠かせない科目です。

住民税

住民税は、税理士試験の選択科目の一つで、地方税法に基づく個人や法人の住民税に関する知識を学ぶ科目です。

この科目では、住民税の課税対象や税率、控除制度、納税手続き、特別徴収や普通徴収の仕組みなどが主なテーマとなります。

試験は理論問題と計算問題で構成され、理論では地方税法における住民税の規定や考え方を説明する力が求められます。

計算問題では、所得に基づく住民税の課税標準や税額の算出方法を正確に理解し、適用する能力が必要です。

合格率は10~15%程度と他の税法科目と同程度で、範囲が比較的広く、地方税特有の制度や計算方法を習得する必要があります。

勉強時間の目安は300~500時間程度で、理論と計算のバランスを意識した学習が重要です。

過去問や模試を活用して、出題傾向を把握しながら、理論部分の暗記と計算練習を繰り返すことが合格への鍵となります。

住民税は地方税の中核を担う税目であり、この科目を学ぶことで地方税務の実務能力を高めることができます。

事業税

事業税は、税理士試験の選択科目の一つで、地方税法に基づく個人事業主や法人が負担する税金について学ぶ科目です。

この科目では、事業税の課税対象や課税標準、税率、控除制度、納税手続きなどが主なテーマとなります。

試験は理論問題と計算問題で構成され、理論では地方税法の条文や事業税の基本的な考え方を理解し、正確に説明する能力が求められます。

計算問題では、事業所得や法人所得を基にした課税標準や税額の算出を行い、特有の控除制度を適用するスキルが必要です。

合格率は10~15%程度で、範囲が比較的広いため、理論と計算のバランスを取った学習が重要です。

勉強時間の目安は300~500時間程度で、特に課税標準や控除に関する計算練習を繰り返すことがポイントです。

過去問や模試を活用して出題傾向を把握し、事例問題を解きながら実践力を養うことが効果的です。

事業税は地方税の中でも実務に直結する知識が多く、この科目を学ぶことで地方税務における専門性を高めることができます。

固定資産税

固定資産税は、税理士試験の選択科目の一つで、地方税法に基づく土地や建物、償却資産に課される税金について学ぶ科目です。

この科目では、固定資産の評価方法や課税標準、税率、税額計算、減免措置、償却資産の取り扱いなどが主なテーマとなります。

試験は理論問題と計算問題で構成され、理論では地方税法における固定資産税の条文や考え方を正確に説明する力が求められます。

計算問題では、固定資産の評価額や課税標準の算定、税額の計算を行い、各種特例を適用するスキルが必要です。

合格率は10~15%程度で、範囲が広く細かい知識が求められるため、難易度は比較的高めです。

勉強時間の目安は300~500時間程度で、特に固定資産の評価方法や課税の特例について繰り返し学習することが重要です。

過去問や模試を活用し、理論と計算の両面で出題傾向を把握しながら学習を進めることが効果的です。

固定資産税は地方税の中でも不動産や資産の管理に直結するため、この科目を学ぶことで地方税務における実務能力を高めることができます。

税理士試験の各科目の合格率と難易度

税理士試験は、11科目の中から必須科目2科目と選択科目3科目の合計5科目に合格する必要があり、科目ごとに合格率や難易度が異なります。

以下に、各科目の合格率と難易度をまとめた表を示します。

科目名合格率難易度
簿記論17.4%低め
財務諸表論28.1%低め
所得税法13.8%高い
法人税法14.0%高い
相続税法11.6%高い
消費税法11.9%高め
酒税法12.7%中程度
国税徴収法13.9%中程度
住民税14.7%中程度
事業税16.4%中程度
固定資産税17.3%中程度

この表から、財務諸表論などの会計科目の合格率が比較的高く、法人税や所得税などの選択必修税法の合格率が低いことがわかります。

税理士試験科目のおすすめの組み合わせ

おすすめの組み合わせは人によって異なりますが、3つご提案します。

パターン1:オーソドックスでバランス型

ひとつめは下記の組み合わせです。

  • 必須科目:簿記論、財務諸表論
  • 選択科目:法人税法、所得税法、消費税法

法人税法と所得税法は実務での需要が高く、消費税法も事業者対応で役立ちます。

試験科目間の関連性が高く、学びが重複するため、効率的な学習が可能です。

ただ、法人税と所得税は範囲が広いため、学習の負荷は多めです。

パターン2:実務特化型(相続・資産税向け)

2つめは下記のとおりです。

  • 必須科目:簿記論、財務諸表論
  • 選択科目:相続税法、所得税法、固定資産税

資産税分野に特化した組み合わせです。

相続税法と固定資産税は不動産や相続関連の案件で必要となり、所得税法も資産運用や節税対策で役立ちます。

資産税はニーズが高いため、競争力を持ちたい人に適しています。

パターン3:負担軽減型(科目合格狙い)

最後に下記の組み合わせです。

  • 必須科目:簿記論、財務諸表論
  • 選択科目:消費税法、酒税法、国税徴収法

税法科目の中でも範囲が狭めで比較的学習負担が少ない消費税法、酒税法、国税徴収法を選択することで、効率よく科目合格を目指す組み合わせです。

深い専門性が求められる科目を避けることで負担を軽減できます。

税理士試験の科目の選び方まとめ

税理士試験は、専門性の高い国家試験であり、計画的な学習と科目選びが合格へのカギとなります。

簿記論や財務諸表論などの必須科目を基礎に、将来のキャリアに合わせた選択科目を組み合わせることが重要です。

税法科目はそれぞれ特徴が異なるため、自分の得意分野や興味を考慮して選択することで、学習の効率を高められます。

科目合格制度を活用し、一度に全科目を目指すのではなく、自分のペースで着実に合格を重ねることが大切です。

また、試験対策としては過去問や模試を活用し、出題傾向や時間配分に慣れることが不可欠です。

税理士試験は難関ですが、合格すれば税務のプロフェッショナルとして幅広い分野で活躍できるチャンスが広がります。

自分に合った学習計画を立て、目標に向かって着実に進むことで、合格を手にする未来が近づくはずです。