社労士資格は取っても意味ない?「やめとけ」といわれる理由を解説


労働関連の法律や社会保険のスペシャリストである「社会保険労務士(以下社労士)」資格ですが、口コミなどで「やめとけ」「取っても意味ない」などといわれることがあります。
これから社労士資格の取得を考えている方にとっては、本当に取得しても大丈夫なのか悩みどころではないでしょうか。
そこで本記事では、社労士資格が「意味ない」といわれる理由や、本当に役に立たないのかなどを解説します。
結論からいえば、社労士資格は独立開業も目指せる資格なので全く意味がないということはありません。
ただし、事前に押さえておきたいポイントもあるため、これから資格取得を目指す方はぜひ参考にしてください。
目次
社労士は取っても意味ない・やめとけと言われる理由
社労士は「取っても意味ない」「やめとけ」と言われる理由について解説します。
主な理由は以下の4点からです。
- 資格取得にかかる時間や費用のコストが大きいから
- 競争が激しく、他の士業と比べて収入が安定しづらいから
- 独占業務の範囲が狭いから
- 合格率が低く難易度が高いから
社労士資格の取得に向けて学習を始めるまえに、押さえておきたいデメリットの部分でもあります。
学習期間のモチベーション維持の観点からも、事前にチェックしておくのがおすすめです。
資格取得にかかる時間や費用のコストが大きいから
社労士資格を取得するのに、時間やコストがかかる点が「やめとけ」といわれる理由のひとつです
社労士資格の合格率はおよそ6%前後で、初学者であれば1,000時間程度の学習が必要です。
社労士試験の学習範囲は広く、以下についての知識が問われます。
- 労働基準法及び労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
選択式試験と択一式試験の2つに合格する必要があり、科目ごとに合格基準点が設定されています。
そのため、得意科目だけに絞ることができず、全科目において合格点を目指す必要があるため、知識の習得に膨大な時間がかかるのです。
また、社労士試験の受験料は15,000円(税込)ですが、効率よく合格を目指すために通信教育や予備校を利用する方も多い試験です。
費用は40,000円~100,000円前後と幅広く、高額な受講料がかかるのも難点となっています。
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競争が激しく、他の士業と比べて収入が安定しづらいから
社労士資格は難関資格でありながら、小規模な事務所が多く求人が少なめです。
そのため、他の士業と比べると就業しにくく収入が安定しづらいというデメリットがあります。
社労士資格だけで就職が決まるわけではないという点に注意が必要で、実務経験などのキャリアも重要な点は押さえておきましょう。
独占業務の範囲が狭いから
社労士資格には独占業務がありますが、範囲が狭く他の業務に応用しづらいという難点があります。
社労士資格の独占業務は、労働・社会保険に関する法令に基づき労働基準監督署や職安、年金事務所等に提出する書類について、以下を行うことです。
- 申請書等の作成
- 提出の代行
- 事務代理
- 帳簿類の作成
- 紛争解決手続の代理業務(特定社会保険労務士に限る)
上記のような業務に携わらない場合は、社労士資格が役立たないケースもあります。
逆にいえば、こうした業務に関わる方にとっては社労士資格は有用といえるでしょう。
合格率が低く難易度が高いから
社労士資格は合格率が低く、難易度の高さが「やめとけ」といわれる一因になっています。
社労士資格試験の近年における合格率推移は以下の通りです。
年度 | 合格率 |
---|---|
令和6年 | 6.9% |
令和5年 | 6.4% |
令和4年 | 5.3% |
令和3年 | 7.9% |
令和2年 | 6.4% |
合格率は7%前後と難しく、合格率だけで見れば公認会計士や司法試験よりも低い数値となっています。
ただし、学習時間は2,000時間以上かかる公認会計士や、予備試験合格が必要な司法試験などと比べると短く済むため、一概に社労士資格の方が難しいとはいえません。
しかし、試験合格には通信教育などを活用して効率的に学んでいく必要があります。
社労士に合格しても意味なかったと後悔してしまう人
社労士試験は取得すると転職活動やその後のキャリアに有利にはたらきますが、合格しても意味なかったと後悔してしまうケースもあります。
特に、以下のような方は取得するかを検討した方がよいでしょう。
- 十分なキャリアを積まずに合格後に独立した場合
- 未経験で合格し、実務に興味が持てなかった場合
社労士資格は合格すれば誰しも安泰というわけではないため、取得に向けて学習を始める前に上記の内容を確認してください。
十分なキャリアを積まずに合格後に独立した場合
十分なキャリアを積まずに合格後に独立した場合は、思うように仕事が取れず後悔する可能性があります。
社労士資格は確かに難関資格ですが、それでも毎年2,000人以上の合格者が出ており仕事は取り合いとなるため、独立にはある程度の営業力や人脈も必要です。
企業の労務部門や社労士事務所などでキャリアを積んでから独立することも検討しましょう。
未経験で合格し、実務に興味が持てなかった場合
社労士資格は「独立できそうな士業」だからといった理由で合格できても、実務に全く興味が持てなかった場合は業務自体が苦痛に感じる可能性があります。
独占業務の範囲が限定的なため、自ずと普段の業務は似たような内容を行うことになるでしょう。
そのため、実務経験が無いまま資格を持っているというだけで業務に従事すると、モチベーションが維持できず後悔するかもしれません。
ある程度業務の内容を把握し、資格取得後も続けられそうな場合に学習を進めましょう。
社会保険労務士で悲惨な末路になってしまうケースや体験談
社労士で、実際に悲惨な末路になってしまったケースや体験談を紹介します。
- 現実の年収は思ったより高くなかったケース
- 未経験で挑戦して苦労したケース
- 勉強に時間と労力を費やしたのに不合格になってしまったケース
どんな資格でも、ただ取得しただけで一生安泰というケースはありません。
資格を活かせるかは自分次第なので、上記のようなケースを参考にしましょう。
現実の年収は思ったより高くなかったケース
社労士の給料が思ったよりも高くないという経験をした方が見られます。
お給料は、固定残業込みの月給20万。年収に直すと前職の半分以下でした。
大幅な年収ダウン・・。
それでも未経験の私を採用してくれた事務所への負い目と、「将来につなげるため」と自分を納得させるほかありませんでした。
引用元:saboro_ワ―ママ開業社会保険労務士 note
社労士事務所の求人は少ないため、望んでいたほどの給料が得られず転職前よりも年収がダウンしてしまったケースです。
勤務型と独立型があるので平均年収もバラツキがちです。
勤務型は年度による変化はあまりありませんが、独立だと稼ぐ人はかなり稼ぐのでその辺で年度によって差が出るのでは?
あとは収入のアンケートに答えている人は同じ人じゃないのでその辺でバラツキも出ます。
774万は高過ぎですね。484万の方が現実に近いと思います。
引用元:Yahoo!知恵袋
年収アップを望む場合は、社労士資格以外のアピールポイントも重要になります。
社労士の給料は社労士事務所などで社員として働いている場合と、独立した方でも大きく異なります。
ただし、独立したからといって青天井に年収が増えていくわけではなく、あくまでもどれだけ仕事が取れるかがポイントです。
未経験で挑戦して苦労したケース
未経験で挑戦して苦労したケースと、さほど気にならなかったというケースどちらもあります。
総務の経験があった方が仕事はしやすいですが、なくても開業している人は大勢いますし、開業が長くても大きい法人の代表でも基本的なことを知らない人は大勢います。
よくやっていけるなと思いますが、社労士の守備範囲が広く法改正が多いためでしょうね。
特にスクール講師が転向した事務所は実務が弱い傾向があるようです。
また、実務ができることと事務所を成長させる才能とは別物のようですから、実務が弱くても、大きい事務所や法人はたくさんあります。
引用元:Yahoo!知恵袋
過去に実務経験がある方の方が独立後の業務はスムーズになります。
ただし、実務経験が無くてもやりながら経験は積めるから問題が無かったという方もいるので、いかに仕事を取ってこられるかがポイントとなります。
成功を収めた社労士の体験談には、貴重な教訓が詰まっています。ある社労士は、開業当初、顧客を獲得するのが非常に難しかったと振り返ります。この方は、まずは地域の商工会やビジネス交流会に積極的に参加し、自らのサービスを広く知ってもらうことから始めました。その結果、初めてお客様を獲得することができ、口コミが広がるきっかけとなりました。
引用元:H&Y 社会保険労務士
開業当初顧客の獲得に苦労する社労士の方は多いようです。
人脈を作り、仕事をもらえるような工夫を地道に行うことで仕事の獲得につながります。
独立の場合は仕事が無ければ年収アップにもつながらないため、顧客を獲得できるよう取り組みましょう。
勉強に時間と労力を費やしたのに不合格になってしまったケース
勉強に時間と労力を費やしたのに、結局不合格になってしまったケースもあります。
今のところリベンジは考えていないが、もしまた社労士試験を受験するならば、今度はどこかのスクールの講座を受講することを検討するだろう。
この試験はとにかく範囲が広いし、初めて聞く単語やよくわからない概念も多かった。私のような初学者には特に、専門家に質問できる環境が必要だった。
逆にいえば、問題集やテキストの解説を読んですんなり理解できるレベルの人ならば、無理に高額なスクールに行く必要もない気がする。しかし法改正などの対応や、モチベーション維持なども考えると、やはり受講するのがベターではあるのかもしれない。
引用元:よしだい@勉強中毒 note
惜しくも社労士試験に落ちた方が、もしまた挑戦する場合のポイントが書かれていました。
法改正や膨大な試験範囲への対策が重要で、予備校や通信講座の利用をおすすめされています。
【失敗談】
① すぐに勉強をスタートしなかった
② 予期せぬ体調不良
③ 法改正・統計・白書対策の遅れ
④ 模試の受けすぎ
引用元:【社労士試験】不合格・合格体験記!失敗談から効果のあった勉強法まで!
法改正などへの対応漏れや、模試を受けているからと満足して学習がおろそかになったことなどを不合格の要因として挙げています。
その後反省点を活かして社労士資格に合格されているので、これから学習を始める場合の参考にしてください。
社労士として独立しても食えないって本当?実際の年収は
社労士として独立しても食えないという評判もありますが、実際のところ年収はどの程度なのでしょうか。
社労士の平均年収は以下の通りです。
- 開業社労士:約724万円
- 勤務社労士:約895万円
引用元:賃金構造基本統計調査
国税庁調査では日本国内における給与所得者の平均年収は458万円なので、平均よりは高い水準の年収となっています。
ただし、収入は事務所によっても異なるためあくまで参考程度に捉えてください。
独立した開業社労士の場合は、1,000万円超えの年収も目指せますが、顧客を獲得できるかによって大きく変わります。
社労士の今後の需要は?
社労士試験を受けるにあたって、今後の需要が気になるという方は多いのではないでしょうか。
前提として、社労士は年金や社会保険などに関する業務に従事します。
現在高齢化が進んでいるところなので、今後年金などに関する相談業務が増えることが予測され、社労士業務の需要が増えていく可能性はあるでしょう。
一方で、近年SmartHRなどに代表されるように、労務管理や手続き業務がAIやクラウドサービスで簡単に処理できるようになっており、社労士に依頼する必要性が減少していくリスクもあります。
そのため、複合的にスキルを身に着けて、より人材としての価値を高めていくことが必要です。
社労士資格は、保険関連や老後の資金運用の観点からFP資格を一緒に取る方も多いので、他の資格所持者との差別化の観点からも取得がおすすめです。
FP資格の取得も検討している方は、以下の記事もチェックしてみてください。
FP通信講座おすすめランキング10選【2025】2級3級それぞれ比較
それでも社労士を取るべき人
前述の内容を踏まえたうえで、それでも社労士を取るべき人は以下のような方です。
- 人事・労務分野でキャリアを積んでいきたいと決めている人
- 40代以上で独立・開業志向が強い人
- 他資格と組み合わせて強みを作りたい人
社労士資格を意味あるものにするには、目的意識と他の資格所持者との差別化が重要です。
社労士資格で独立したい方はぜひ確認してみてください。
人事・労務分野でキャリアを積んでいきたいと決めている人
人事・労務分野のスペシャリストとしてキャリアを積んでいきたいと決めている方には、むしろ社労士資格は必須といえます。
書類作成や提出など社労士にしかできない独占業務があるため、資格を取得しないとできない仕事が発生するためです。
将来的に独立をする場合も社労士資格がないと難しいため、キャリアアップを目指す方は挑戦してみてください。
40代以上で独立・開業志向が強い人
社労士資格は40代以上でも独立が目指しやすい資格なので、独立・開業志向が強い方には向いています。
公認会計士や司法試験は知名度も需要も大きく、独立がさらにしやすいものの、必要な学習時間が膨大なため若くないと挑戦しにくい資格でもあります。
一方で、知名度がある宅建も独占業務があるものの、難易度が低くそれだけで独立はしにくいのが難点です。
士業として独立しやすく、需要もそれなりに大きい社労士資格は、40代から独立開業を目指す方にはおすすめです。
他資格と組み合わせて強みを作りたい人
他資格と組み合わせて強みを作りたい人には、社労士資格の取得は向いています。
例えば、法律関連で相性の良い資格では行政書士や中小企業診断士、FPなどが挙げられます。
組み合わせると相談業務や仕事の幅が広がるので、複数資格を取得して独自の強みを作り出しましょう。
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社労士の資格は自身のキャリアパスによっては意味がある
本記事では、社労士資格が「意味ない」といわれる理由について解説しました。
社労士資格は難易度が高く、求人が少ないことなどから、取得しても食えないといわれる要因となっています。
しかし、他資格と組み合わせて強みを作ったり、人事労務関連のキャリアを活かして仕事をしたい方にとっては独立も目指せる資格です。
いかに仕事を取ってこられるかがポイントなので、社労士として独立志向がある方はぜひ参考にしてください。
これから社労士試験の学習に取り組む方は、以下でおすすめの通信講座を紹介しているのでチェックしましょう。