土地家屋調査士はやめとけと言われるのはなぜ?理由や将来性まで解説


土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記の調査や測量などの手続きをする「不動産登記の専門家」で、独立開業をして高収入を目指せる仕事です。
一方で、なぜか「土地家屋調査士はやめとけ」というネガティブな評判が目立ちます。
理由としては、知名度が低い割に資格取得が非常に困難なことや、肉体的にも精神的にもハードな業務が多いことが挙げられます。
ただ、需要が多いため安定性が高く、高収入を目指せるポジティブな面も多い仕事です。
そこで、この記事では「土地家屋調査士はやめとけ」と言われる理由を解説すると共に、土地家屋調査士の魅力や将来性をご紹介します。
仕事内容のメリットやデメリット、将来性を知るために役立てて頂ければと思います。
また、土地家屋調査士の資格取得に興味を持っている方は、以下の記事で通信講座選び方を解説しているので、ぜひ参考にして下さいね。
土地家屋調査士通信講座おすすめランキング2025 比較すべき5講座
目次
土地家屋調査士はやめとけと言われる理由は?
「土地家屋調査士はやめとけ」と言われてしまうのは、以下のような理由が挙げられます。
- 他の法律系資格と比べて業務の幅が狭いから
- 体力勝負で仕事がきついことも多いから
- 見習いの時期は年収が低いから
- 独立開業しても仕事がないことがあるから
- 知名度の割に資格取得の難易度が非常に高いから
1つずつ解説します。
他の法律系資格と比べて業務の幅が狭いから
土地家屋調査士は、土地や建物の測量や調査、登記の申請手続きなどが主な業務内容です。
弁護士や司法書士など法律系資格と比較すると業務の幅が狭いので、物足りなさを感じる方が多いようです。
一方で、独占業務ができるため専門性が高く、一つの仕事を極めたいという職人気質な方には非常に向いています。
また、土地所有者から相談を受けた際にアドバイスをするなど、人と対面する業務も多いので、一概に業務の幅が狭いとも言えません。
日本土地家屋調査士会連合会の公式HPや厚生労働省の職業情報提供サイトでは、業務内容や実際に働く調査士の紹介動画が公開されているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
また、司法書士の試験内容や業務内容については、以下の記事で詳しく解説しているので、比較の参考に役立ててみて下さい。
司法書士試験の難易度は難しい?合格率や独学が難しい理由も解説
体力勝負で仕事がきついことも多いから
土地家屋調査士は、土地や建物の測量や調査が主な業務のため、当然ながら屋外での作業がメインです。
真夏の炎天下の日や真冬の寒冷地など、過酷な気候での作業にも耐えなければいけないので、肉体的な負担が非常に大きいと言えます。
屋外での作業に加えて、登記手続きの準備や事務作業も多く、顧客の依頼を受けて、調査や測量の計画を立てる必要があります。
また、土地の境界の確認には隣接する土地所有者の立会いが必要なため、顧客のスケジュールに合わせなくてはいけません。
専門知識や技術と共に体力勝負の側面が多いので、肉体的にも精神的にもハードな仕事と言えます。
見習いの時期は年収が低いから
土地家屋調査士は、1年から3年程は見習い期間として補助的な役割をすることが多いため、最初は年収が低いと言われています。
見習い期間中は年収が低いことに加えて、補助的な作業や事務作業が多くなるため、「辞めたい」と思ってしまう方が多いのかもしれません。
ただ、業務内容や報酬に関しては、土地家屋調査士事務所や測量会社などによって異なるので、勤務先の選び方にもよります。
また、土地家屋調査士は独占業務で独立開業もできるので、将来を見据えて徐々に年収アップを目指せる仕事です。
見習い期間中は、教育体制が整っている勤務先で専門的な技術や知識をしっかり身に付けることを優先することも大切です。
独立開業しても仕事がないことがあるから
土地家屋調査士は、独立開業しても仕事が多いとは限りません。
同業者や測量業務を代行する企業との競争が激しい場合もあるので、開業したての時期はすぐに仕事を取れない可能性もあります。
また、景気の変動や不動産市場の動向により需要の大きさに波があるので、市場の変動に柔軟に対応できる能力を持つことも重要です。
さらに、不動産取引や建築の需要においては、都市部と地方でも差があるため、開業する地域のニーズにも注目しなければいけません。
独立開業で成功するためには、実務経験を積み、人脈作りなどネットワークを構築させておくことが重要なポイントです。
また、個人の営業力やコミュニケーション能力を普段から鍛えておくこともおすすめです。
知名度の割に資格取得の難易度が非常に高いから
土地家屋調査士は知名度の割に資格取得の難易度が非常に高く、過去5年間の合格率は10%前後という低さです。
年度 | 受験者数 | 合格人数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年 | 4,429人 | 428人 | 9.66% |
2022年 | 4,404人 | 424人 | 9.62% |
2021年 | 3,859人 | 404人 | 10.47% |
2020年 | 3,785人 | 392人 | 10.36% |
2019年 | 4,198人 | 406人 | 9.68% |
引用元:法務省>土地家屋調査士試験
また、試験に合格するためには約1,000時間の学習時間が必要と言われており、挑戦しても途中で挫折してしまう方も多いようです。
ただ、不動産に関わる知識や実務経験がある方は基礎知識があるため、学習時間を減らせる可能性もあります。
また、法務省の土地家屋調査士試験受験案内によると、測量士や測量士補、一級建築士または二級建築士の資格を所有していると、午前の試験が免除される制度もあります。
特に関連の深い測量士や測量士補の資格取得をした後に、土地家屋調査士試験に挑戦すると効率良く学習できておすすめです。
それでも土地家屋調査士が向いている人は?
土地家屋調査士の業務の過酷さや資格取得の難易度を解説しましたが、魅力は多い仕事です。
そこで、土地家屋調査士のデメリットを理解しつつ、それでも挑戦したい方向けに解説していきます。
土地家屋調査士に向いている方の特徴は、以下の4つです。
- 食いっぱぐれない安定した仕事をしたい人
- いずれ必ず独立開業をしたい人
- 不動産に関わる業務経験がある人
- 顧客と対面で話すのが苦ではない人
1つずつ解説します。
食いっぱぐれない安定した仕事をしたい人
土地家屋調査士は、境界の確定や登記申請などの独占業務ができる国家資格なので、食いっぱぐれなく安定した仕事を求める方におすすめです。
土地家屋調査士は独立開業する方が多いため、自分のペースで働けるのも嬉しいポイント。
不動産取引数は景気の影響を受けやすい面もありますが、市場の変動に柔軟に対応したり、人脈を広げたりしておくことで対策はできます。
また、肉体的にハードなのがデメリットですが、独立開業すれば現場作業は若いスタッフに任せて、自分は経営や登記作業、相談業務などをメインにすることも可能です。
働き方を工夫すれば、歳を重ねても食いっぱぐれなく安定して仕事を続けられるのが魅力です。
いずれ必ず独立開業をしたい人
土地家屋調査士は個人事務所を立ち上げる方が多いので、将来は独立開業をしたい方に非常におすすめです。
需要の大きさに波はあるものの、不動産が存在する限りは土地家屋調査士の業務は必要不可欠な仕事です。
定年がないため長期的に働くことも可能で、独立して成功すれば高い収入が期待できます。
勤務時代の人脈を活かし、ネットワークを広げておけば顧客獲得のチャンスも広がります。高い専門性を活かし、必ず独立開業をしたい方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
不動産に関わる業務経験がある人
不動産に関わる管理や開発、営業などの業務経験がある方にも、土地家屋調査士の仕事はおすすめです。
不動産取引や管理業務の知識は、測量や登記業務と深い関わりがあるため、土地家屋調査士の業務全般で活かすことが可能です。
特に、宅建士の資格を取得していれば、不動産取引の仲介もできて業務の幅が広がるため、競合との差別化もできます。
また、不動産に関わる実務経験において築いた人脈があれば、顧客獲得に活かすことも可能です。
顧客と対面で話すのが苦ではない人
土地家屋調査士は顧客の依頼を受けて土地や建物の測量や調査をするため、人と話す機会が非常に多い仕事です。
そのため、人と対面で話すことが苦手な方は、正直かなり厳しいと言えます。
境界における隣人トラブルなど顧客からの相談に乗ることも多いので、相手のニーズを柔軟に汲み取る能力も必要です。
また、様々な手続きにおいて不動産業者や役所の担当者と話す機会も多く、業務を円滑に進めるためのコミュニケーション能力も求められます。
新規顧客を獲得するための人脈作りも非常に重要なので、人と話すことが好きな方には特に向いている仕事です。
土地家屋調査士はやめとけ・辞めたいに関する体験談
「土地家屋調査士はやめとけ」「土地家屋調査士辞めたい」と言われる理由や体験談に関する口コミをご紹介します。
現着。 働き方に融通利くし、報酬も悪くない(というかたぶん良い)し、環境は恵まれてると思うのに事務所辞めたいって思うのは、駒として扱われてると感じるからかなぁ。
引用元:X
報酬が良くても、業務内容によっては辞めたいと感じる方もいるようです。
職場の業務方針や環境などで働きやすさは異なると分かります。
Twitterには女性の土地家屋調査士がたくさんいて、実はめっちゃ励みになってます。昨日は青調会の総会でしたが、女性は私1人。だいたいいつもそうだけど私は出れる限り行こうと思ってる。土地家屋調査士を男性しかいない組織にしたくないなーって、なんとなくの使命感みたいなのあるんだよねぇ。
引用元:X
土地家屋調査士は業務の過酷さから男性の割合が非常に高く、女性の調査士は肩身が狭い思いをしてしまうことも多いようです。
土地家屋調査士の仕事は辛い。
身体も使うし頭も使う。そしてストレスも溜まる。
一言で言えば過酷。でも、だからこそ仕事があるのよ。
楽に稼げる仕事なんて普通無い。楽に稼げる業界ならとっくに大手に荒らされてる。大手ってそんなもんよ。
今日もコツコツ、土地家屋調査士頑張ろー。
引用元:X
肉体的にも精神的にも過酷と感じることも多く、ストレスがたまりやすいと分かりますが、前向きに捉えられる方もいるようですね!
息子が土地家屋調査士で独立しています。大卒ですがエリートではありません。そこは問題になりませんよ。それよりも、造園業も土地家屋調査士も大変さは変わらないし、そんなに儲かる仕事でもないです。どちらも肉体労働がありますし、きわめて面倒な交渉事も必須です。それでもやりたいなら土地家屋調査士事務所に補助者見習いで雇ってもらうことです。一つだけ言えることは未来のことは誰もわからない・・・。造園業がダメだとなぜ言えるのか? 一人前の職人になれば仕事は向こうからやってきます。土地家屋調査士も補助者で何年がんばっても資格取れない人が大勢います。けっして平坦な道ではないでしょう。開業しようと思えば何百万単位の資金も必要になります。それでも仕事が入って来ないで廃業するケースもふつうにあるそうです。今やってることはこの先の人生で役に立たないことは絶対ありません。今一度考えてみてください。
引用元:Yahoo!知恵袋
私は電気の技術屋でしたが、大嫌いな仕事にて何度も転職を考えました。
生活に追われてやってるうちにいつのまにかプロ扱いされ、仕事に困ることはありませんでした。言っておきますが、あなたは今と同じことをしようとしています。だから、同じ結果になると思います。辛抱、忍耐、たゆまぬ努力が未来を作りだすと信じています。
資格取得が困難ですが、業務内容は肉体労働で必ずしも儲かるとは言えないという厳しい意見です。
私が受験を始めた平成元年の頃は約12000名でした合格者は約600名。合格率は約5%でした。(司法書士は約3%)
引用元:Yahoo!知恵袋
当時はバブル時代でしたので相当稼げたのではないでしょうか。
また、報酬も自由競争ではなく各単位会ごとに決まっていました。
不動産登記法の改正等があり調査士の作業量が増えました。また開業資金には多大な出費を要します。気苦労の割りには稼ぎにくくなったのが受験生減の要因かなと考えています。
近年は開業したはいいが、仕事がなくやめる調査士が多いと聞いています。
(どの資格でもそうですが、稼げる人は稼いでいますけどね。笑)
土地家屋調査士の資格は非常に困難なことに加えて、独立しても稼げなくて辞めてしまう方も多いようです。
一方で稼げる方も一定数いるので、個人差はあるのかもしれません。
土地家屋調査士の今後や将来性
土地家屋調査士の今後や将来性についてのポイントは、以下の3つです。
- 地方の仕事が減る一方で都市部で需要が増加する
- ドローン測量や3Dスキャニングの普及で淘汰される可能性
- 所有者不明土地問題や相続による土地分筆で仕事が増える
1つずつ解説していきます。
地方の仕事が減る一方で都市部で需要が増加する
土地家屋調査士の仕事は、地域によって仕事の需要に差が出るのが特徴です。
都市部では再開発や新築の需要が継続するため、土地の境界確定や測量の仕事が一定数見込まれます。
また、人口が多い分、不動産取引や開発プロジェクトが盛んに行われるのも特徴です。
一方で、地方では人口減少や過疎化に加えて、土地開発が進んでいない地域では不動産取引の仕事は減少します。
そのため、都心部と比較すると地方では土地家屋調査士の需要は少ない傾向です。
ただ、全国的に高齢化が進んでいるため、相続における分筆や売却における業務は増加すると予想されます。
働きたいと考えている地域の不動産情報や、土地家屋調査士の需要について事前に確認しておくと、将来的な戦略を立てられるかもしれません。
ドローン測量や3Dスキャニングの普及で淘汰される可能性
近年では、ドローン測量や3Dスキャニングにより業務が自動化されることが多いです。
ドローンを使用すると測量範囲に制約がなく、人が立ち入れない危険な区域でも測量や調査ができるメリットがあります。
ドローンやAIなどの新技術が普及すると、土地家屋調査士の仕事が少なくなるというネガティブなイメージが多いかもしれません。
結論としては、技術が発展するとしても、法的な判断など人間でなければ成立しない業務も多いので、ドローンやAIに完全に仕事を奪われることはありません。
見方を変えれば、ドローン操縦技術や3Dデータの解析スキルなどを取り入れることで、業務効率化になるほか、競合との差別化をすることも可能です。
時代のニーズに合わせた新技術を上手く活用し、ポジティブに戦略を練っていくことで稼げる可能性は高まります。
所有者不明土地問題や相続による土地分筆で仕事が増える
近年、高齢化社会に伴い、空き家や所有者不明土地の問題が全国的に広がっているため、土地家屋調査士の需要は高まると予想されます。
内閣府の政府広報オンラインによると、2022年度に実施した地籍調査事業で所有者の所在が判明しなかった土地の割合は24%にも及び、九州の面積よりも広いと言われています。
所有者不明土地問題は周辺の環境や治安の悪さを招き、近隣住民の不安が高まる大きな社会問題です。
隣の土地と境界が曖昧な場合、土地の所有間でトラブルになるケースも少なくありません。
所有者不明土地問題において、相続に関わる不動産の取引業務は増加していくと考えられます。
登記簿や公簿情報による所有者の特定や、相続に伴う手続きや土地分筆など、土地家屋調査士にしかできない仕事が多いので、将来的にも仕事は増えていくと言えます。
土地家屋調査士に関するよくある疑問
40代未経験でも土地家屋調査士に挑戦して活躍できる?
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、土地家屋調査士の全国の平均年齢は51.2歳で、業界全体で年齢が高い傾向にあります。
そのため、40代では比較的若手に入るため、未経験でも挑戦できる可能性はあります。
また、近隣との境界や相続問題などデリケートな問題にも関わるため、若手よりも40代以降の担当者の方が相談しやすいと感じる顧客も多いです。
ただ、屋外業務の肉体労働が多いので、体力に自信があることは重要です。
土地家屋調査士は女性も多い?男女比は?
土地家屋調査士白書2022によると、全国の土地家屋調査士16,141人のうち女性は521人で、割合は3.2%と非常に少ないことが分かります。
屋外では炎天下の日や寒冷地での作業も多いため、女性にはハードルが高く相当の体力も必要です。
一方で、女性ならではの細やかな気遣いができて作業が円滑に進むこともあり、男性に対して警戒心を持つ顧客からは歓迎されることも多いようです。
日本土地家屋調査士会連合会の公式HPでは、女性の土地家屋調査士が活躍する紹介動画も公開されているので、参考にしてみて下さい。
土地家屋調査士の業務はきついが将来的に需要があり安定性のある仕事!
この記事では「土地家屋調査士はやめとけ」と言われる理由について、詳しく解説してきました。
土地家屋調査士は、資格取得が非常に困難なうえに、業務内容は肉体的にも精神的にも負担が多いことからネガティブなイメージが多い仕事です。
一方で、独占業務がある希少価値の高い仕事で、独立して成功すれば高収入を目指せるのが魅力です。
所有者不明土地問題や相続問題の観点から、将来的にも仕事は増加し安定して働けると予想されます。
土地家屋調査士試験に合格するためには、通信講座で効率良く学習するのがおすすめです。
以下の記事では、おすすめの通信講座について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみて下さい。